SpaceFわひね(wahine) 

一人ひとりが思いを、あるときは共有し、あるときは自由にたゆたう。。そんな場所をめざして 

2017年

08月11日

(金曜日)

夜明けの祈り

見るのは気が重い映画でしたがやっと見ました。重い映画です。事実に基づいた修道院の映画.。

夜明けの祈り

数年前の「神々と男たち」への違和感とは違い、痛みに気持ちを沿わせることができる気がします。というには身の程知らずで軽すぎる自分だと自覚しつつ。

毎日新聞金曜日夕刊の「シネマの終末」
第二次世界大戦の終戦直後、ポーランドの修道院で起きた実話を元にした作品。想像を絶する苦難に見舞われた修道女たちと、使命感に基づき行動した若き女性医師の物語だ。

 1945年、ポーランド。フランス赤十字の一員として働く医師マチルド(ルー・ドゥ・ラージュ)はある日、修道女の訪問を受け、遠く離れた修道院を訪ねる。そこでは、戦争末期にソ連兵の蛮行によって身ごもった多数の修道女がいた。マチルドは職場や恋人にも内緒で修道院に通い、彼女たちを診察し続ける。

 ココ・シャネルの半生を描いた「ココ・アヴァン・シャネル」などで知られる女性監督アンヌ・フォンテーヌは終始、修道院を薄暗い光の中に包み、修道女たちの苦悩、信仰の揺らぎ、性的な抑圧を伝える。

 修道女たちにとって、純潔は神にささげる信仰の証し。だから、ソ連兵に陵辱された被害者なのに、彼女たちは妊娠を恥じ、神の罰を恐れ、マチルドの診察も怖がる。女性監督ならではの感性で、女性たちの複雑な感情を繊細に描いた。

 信仰を支えにする修道女と、近代的な合理主義に基づいて生きるマチルドの対比も物語に刻印を与える。プライベートでは同僚の男性医師と恋愛をし、修道院では医師としての使命から修道女たちを助けるマチルドに、修道女たちも心を開き、信仰のベールの奥に隠された本心をのぞかせる。

 修道院を襲ったソ連兵たちの中で、自分をかばってくれた兵士への恋心を抱く修道女や、修道院に入る前に恋人がいたことを打ち明ける修道女など、一人一人の内面に光を当て、政治や信仰、社会通念に抑圧された女性たちを解放していく。フォンテーヌ監督が、頑迷な信仰心よりも、科学やヒューマニズムをより価値あるものとみなしていることが伝わってくる。ラストの落とし方は、教会や修道院のあり方へのメッセージとも受け取れた。1時間55分。ヒューマントラストシネマ有楽町ほか。(木)

もう一言
 事件の悲劇性を描くだけでなく、若い修道女が森や雪原を歩いて行くショットなど映画的なイメージも豊かな作品で、残酷な世界の中で孤立した修道院の物語に引き込まれる。何度かさりげなく画面を出入りする戦争孤児たちへの優しいまなざしにも胸を打たれた。(諭)

さらに一言
 命を救おうとする医師の信念と、母になる人生を想定していない修道女の信仰。交差するはずもない彼女たちが連帯していく様子が厳かな映像で切り取られ、その美しさに何度も胸を突かれた。ヒロインの凜々(りり)しさを際立たせるユダヤ人医師とのエピソードも効いている。(細)

技あり
 ベテランのカロリーヌ・シャンプティエ撮影監督は、コンビを組むフォンテーヌ監督に、放置された修道院をロケ地に推薦した。映画用に作られた小礼拝堂と、古びたアーチ道や中庭を違和感なく巧みに組み合わせて映像化し、高評価。欧州17世紀の絵画を思わせる、明暗をくっきり出した祈りの時間など荘厳な画調と、シスターたちがゲームや編み物などに精を出す夜のひと時の、和んだ柔らかな調子の組み合わせもいい。セザール賞撮影賞を取った「神々と男たち」(2010年)以来の僧院物で、さらなる進境を示した。(渡)


 や日曜版の「藤原帰一の映画愛」の紹介文に影響されました。

大戦直後の隠された事件 パンドラの箱に残る希望
 第二次世界大戦直後のポーランド、そこには隠された事件があった。こんな紹介を聞くとどう思いますか。

 そうか、その事件を知らなければならないと考えるのは、真面目な人。また悲惨な事件か、暗い話はたくさんだと敬遠したくなる人もいるでしょう。私はその両方なので見始めは気が重かったんですが、これが良かった。暗いだけの映画じゃありません。

 若いフランス人マチルドは、フランス赤十字病院で働いています。そこに修道院のシスターが、助けを求めてやってきた。この赤十字病院が手当てする患者はフランス人傷病兵なので、ここではできないと伝えますが、シスターは雪の積もった屋外で祈るばかりで引き下がらない。病院の仲間には内緒で、マチルドは修道院に向かいます。

 そこにいたのは、出産間近で苦しむ女性。まだ医師としての経験も少ないマチルドは、出産を手伝いますが、どこかおかしい。まず、医者の助けを求めないことがおかしい。しかも、お腹(なか)の大きい女性が1人ではない。何か隠されているようです。

 次第にわかってくるのは、ドイツが敗退した後にやってきたソ連兵が修道院を襲い、シスターたちを繰り返しレイプしたことです。そのために何人もの修道女が身ごもったけれど、肌を見せることもあってはならないシスターたちですから、公表できない。また公表すれば、カトリック教会に厳しい新政権によって修道院が潰されてしまう危険もあります。見かねたマチルドは、この秘密を口外しないことをシスターに約束して、赤十字病院の同僚には内緒のまま、たったひとりで7人の出産に関わることになります。

 まさに隠された事件ですね。第二次大戦直後のソ連兵によって数多くの女性が陵辱されたにもかかわらず、その性暴力の実態が明らかになるまでには多くの時間を要しました。この映画も実話をもとにしているとのことです。

 つらい映画です。シスターたちは、どうしてこのように酷(ひど)い目に遭うのかわからない。祈ることで苦難に耐えようとしますが、なぜ神がそのような試練を与えるのかがわからない。神に祈りが届いているのかもわからない。マチルドはカトリック信者ではありませんが、危険を冒してシスターを支えても、自分の力では助けることも難しい。病院と修道院を往復するなかで、マチルド自身も兵士に襲われてしまいます。

 ただ、苦しみだけではなく、救いも残されています。その具体的な内容は映画館でご覧いただくことにして、ここでは筋書きをばらす代わりに、この映画の最後に1回だけ流される楽曲「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」についてお話ししたいと思います。

 この「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」、先だって公開された「メッセージ」で効果的に使われていたのでご存じの方も多いでしょう。マーティン・スコセッシ監督の「シャッターアイランド」ではこの曲にダイナ・ワシントンの別の歌の、「この苦い世界で」を合わせていました。自分の力では変えることのできない苦しみばかりの世界を前に、自分に生きる意味があるのだろうか。苦しいですね。

 それでも、苦しみのなかにある人々、その人々を支えようとしながら支える力の乏しい人々のなかにも、心の温(ぬく)もりは残されている。そこに光が差しています。ちょうどバッハのシャコンヌのように、「オン・ザ・ネイチャー・オブ・デイライト」は、悲しみのなかに微(かす)かな喜びも伝える一曲です。

 パンドラの箱が開き、苦しみと悲しみが世界に広がった。それでも箱の底には希望が残されている。暗い話だと敬遠せず、ぜひ映画館においでください。(東京大教授)

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