SpaceFわひね(wahine) 

一人ひとりが思いを、あるときは共有し、あるときは自由にたゆたう。。そんな場所をめざして 

2018年

02月09日

(金曜日)

母は強し?

「スリービルボード」
スリービルボード

出演作はいつも気になるフランシス・マクドーマンド、今回も、不愛想でいながら、深い感情が見る者に迫ってくる演技は唯一無二だ。
アメリカ南部の小さな町で、人望厚い警察署長をビルボード(広告)を掲げて非難する挙に出た、怒れる母親ミルドレッドを圧倒的に演じている。

娘を死に至らしめた犯人を突き止めたい一心の行動がもたらす危険にも自分を鼓舞して戦う生き様は、周囲の人々にも混乱や困惑、そして少数ながら共感も生み出す。
娘との最後の別れになるとは予想だにしなかった口論の時を、悲しみと救われようのない悔いを抱きながら思い返していることを、彼女の表面の強さに圧倒されている周囲の者は想像していないに違いない。
内に向かう負のエネルギーと同じくらい強い力で、自分が住む町の住人、あるいは今を生きている全ての人に、不条理な娘の死の意味を問いかけている。
世の中の男たちと男たちを産み育てる女たちにも見て欲しい。

彼女の"敵"警察署、の面々を演じる役者たちが、巧くて、男たちへのやるせない思いも持たされてしまうのが、なんとも言い難し。
南部の白人男性の典型的な差別主義者として描かれていた警察官が、署長の死によって自分と向き合い葛藤し、警官としての有能さと良心を取り戻していくところが、一面的ではないところを担保する演出の狙いだろうけれど、この映画の苦さを緩和してしまうかも。。

「ローズの秘密の頁」
ローズの秘密の頁

これは第二次大戦中のアイルランドの物語だけど、普遍的なテーマとして現代にも大きな問いかけをしている。

「スリービルボード」にも教会の牧師の倫理への懸念が強く描かれていたけれど、カソリックのアイルランドではさらに深刻な問題提起。
当時の教会の教えによると、女性が目を直接見ることが許されるのは夫だけだったそうな!?
未婚なのに男性を直視するローズは、そのことだけで娼婦呼ばわり!

フランシス・マクドーマンドと同じように常に気になる役者のヴァネッサ・レッドグレイヴと、出演するたびに違う役柄を演じるルーニー・マーラは、随分違うタイプの俳優だけど、二人の演技力は甲乙つけがたい。
ストーリーはラストでファンタジー的な結末を迎え、ある意味カタルシスをもたらしてくれるけれど、それが望ましいエンディングとは言えない気がして映画館をあとにした・・・

2018年

01月16日

(火曜日)

否定と肯定

「否定と肯定」
否定と肯定

個人的には、英米の法廷事情の違いや、(断定はいかんと思いつつも)自己主張ありきのアメリカ人と交渉ありきのイギリス人、、雄弁と寡黙、そんな違いが顕著に見て取れることに感じ入った。おまけとして、最近再放送されたカンバーバッチのホームズシリーズの宿敵モリアーティを演じたアンドリュー・スコットの控えめな演技に魅了されたし、兄のマイクロフトを演じたマーク・ゲイティスも証人の一人として登場しているし。

昨年末に来日した原作の著者や映画に関する毎日新聞記事を読んであらためて、日本の現状はこうした事態に抵抗できるのかという懸念にとらわれる。

水説
「否定と肯定」に学ぶ=中村秀明
毎日新聞2017年11月29日 東京朝刊
「ヒトラーはユダヤ人の大量虐殺を命じていない」「ホロコーストはなかった」
 そう主張する歴史家に、自らの著書で反論した歴史学者が名誉毀損(きそん)で訴えられる。争いようのないはずの事実が、審理にかけられた裁判が2000年のロンドンで繰り広げられた。

 来週末から公開される映画「否定と肯定」はこの事実に基づいている。訴えられたデボラ・リップシュタットさんが最近来日した。彼女は「こんなに今日的な意味を持つ作品になるとは思ってもいなかった」と切り出した。

 映画化が持ち上がったのは09年だった。当時は「フェイク(偽の)ニュース」という言葉もトランプ現象もなかった。自分の立場に好都合だったり、自らの思いや願望に沿っていたりすれば、虚偽でも不確かでも、その情報を受け入れるといった風潮は想像すらできない時期だ。

 今や歴史上の出来事やどんな視点からも揺るがないはずの事実が、攻撃され危うい。彼女は語った。

 「個人的な意見や解釈は構わないが、個人的な事実などはありません」

 「なぜ起きたか、どんな背景があったかを議論する余地がある。しかし、事実かどうかは議論できないのです」

 映画では老練な法廷弁護士の存在感が光った。「現場を知っておきたい」とアウシュビッツ強制収容所跡を歩き、かつて何が起きたかに思いをはせる。その夜、感想を口にする場面がある。

 「何を感じたの」と問われ、彼は「恥だ」と答える。さらに表情をこわばらせ「そして恐怖も」と語り、「私もあの場にいて命じられたら従わざるを得なかったかもしれない」と言葉を継いだ。

 差別主義や排外主義を小さな芽のうちに摘みとり、身近な偏見や憎悪を戒めなければいけない理由がここにある。世の大きな潮流になってしまえば「おかしいよ」と言い、「いやだ」と抵抗するのが難しくなる。私たちは弱いし、流されやすいのだ。

 リップシュタットさんは滞在中、2日にわたって靖国神社の遊就館を訪れている。特に特攻隊員の遺書に関心を持ったようだ。後日、メールで感想が届いた。

 「祖国のための犠牲に敬意が払われるというのは理解できるが、疑いようもないほどの称賛には不安をおぼえました」という。
 そして「むやみな称賛が若い世代に与える影響が怖い。私は見ていて悲しい気持ちになりました」と締めくくってあった。(論説委員)

人模様
ホロコースト否定派と対決 デボラ・E・リップシュタットさん
毎日新聞2017年12月2日 東京夕刊ナチス・ドイツによるホロコーストの否定論者とユダヤ人学者の法廷での対決を描いた映画「否定と肯定」の上映が8日から各地で始まる。原作者で米アトランタのエモリー大学のデボラ・E・リップシュタット教授(70)が東京の日本記者クラブで会見し、「なぜ起きたのかという議論は大いにあっていい。だが事実は否定できない」と語った。

 「大量虐殺はなかった」と主張する英国の歴史学者が、著作を通じて批判するリップシュタット教授を名誉毀損(きそん)で訴えた裁判が2000年にロンドンであった。映画はこの実話に基づき、英国出身のミック・ジャクソン監督が重厚な法廷劇に仕上げた。「私は歴史が裁判にかけられたと受け止めた。弁護団の戦術の深さで勝利できた」と同教授。

 ナチスの高官ラインハルト・ハイドリヒの暗殺事件を題材にした「ハイドリヒを撃て!」も今夏、日本で公開された。「この事件も事実。私たちは映画を通じて歴史を知ることがある。大切なのは平和な未来につなぐこと」【明珍美紀】

藤原帰一の映画愛
否定と肯定 ホロコーストめぐり欧米と日本に距離感
2017年12月3日 04時02分(最終更新 12月3日 04時02分)
ホロコースト。ユダヤ人を中心とする人々に対してナチス・ドイツの行った暴力的迫害、強制収容、そして大量虐殺ですね。二度とこのような殺戮(さつりく)が起こってはならない、起こすことを容認してはならないという決意が、第二次世界大戦後の世界、少なくとも欧米諸国を支えてきたと言っていいでしょう。

 それでも、ホロコーストはなかったという議論を立てる人がいます。殺害された人数がニュルンベルク裁判に認定された600万人よりも少ないという主張に始まって、強制収容所にガス室は存在しなかったとか、ヒトラーによる虐殺の指示はなかったという主張、さらにホロコーストはユダヤ人と連合国によるでっち上げだという主張もある。この映画はその、ホロコースト否定に関わる実話の映画化です。

 アメリカの歴史学者デボラ・リップシュタットがその著書「ホロコーストの真実」においてホロコースト否定論を退けたところ、その著書で言及のあったイギリスのデイヴィッド・アーヴィングが、名誉を傷付けられたと訴えました。訴えた場所がイギリスなので、争うならイギリスまで行かなければならない。また、名誉毀損(きそん)なら訴えた側が立証すればよいように思いますが、イギリスの司法制度では訴えられた側に挙証責任がある。刊行したペンギン出版と協議の末、リップシュタットは裁判で争うことを決めます。

 ただ、なかなかうまくいかない。まず、弁護士が、依頼を受けて法律相談に応じるソリシターと、証拠調べや法廷での弁論を行うバリスターに分かれているのがよくわからない。裁判を準備する弁護側の方針も理解できない。リップシュタットは法廷で自分の主張をしたい、ホロコースト犠牲者にも法廷で証言してもらいたいと希望しますが、弁護側から、どちらもダメだと証言を封じられてしまう。私が訴えられてるのに証言させないなんて、この裁判おかしいじゃないか。このままではホロコースト否定論が認められることになる。映画は、訴えた側と訴えられた側ばかりでなく、リップシュタットとその弁護団との食い違いを基軸として展開します。

 俳優のおかげで成功した映画です。リップシュタット役のレイチェル・ワイズは、理想のために突き進みながら、愛くるしいので人を遠ざけない。「ナイロビの蜂」では、外交官の妻でありながらアフリカで人体実験を行う製薬会社の告発にまっしぐらというヒロインを演じました。今回もその延長線上みたいな役どころです。

 他方、弁護団は曲者(くせもの)ばっかり。ソリシターを演じるアンドリュー・スコットはテレビの「SHERLOCK/シャーロック」や007の新作で悪役だった人ですし、法廷弁護士はイギリスきっての名優トム・ウィルキンソン。純朴なヒロインと曲者の博覧会みたいな弁護団という対照ですね。

 それにしてもこの映画、ホロコースト否定はとんでもないという理解が確立しているからこそ成り立っているわけで、そこに日本との距離を痛感します。だって日本では、南京大虐殺はなかったとか従軍慰安婦は娼婦(しょうふ)だったなどという議論が当たり前のように行われている。ホロコーストについても、ガス室はなかったとかいったことを唱える人が日本では少なくありません。歴史修正主義が「とんでもない議論」ではない社会なんですね。

 邦題は「否定と肯定」ですが、映画の原題はディナイアル、つまり「否定」。そこには否定と肯定のバランスをとるのではなく、歴史上の事実を否定するなんて信じられない、あってはならないというスタンスがあります。邦題と原題とのズレのなかに、歴史問題をめぐる欧米と日本との距離を感じました。(東京大教授)

シネマの週末・時代の目
「否定と肯定」 虐殺の「真実」を裁判で
毎日新聞2017年12月8日 東京夕刊
ナチスによるユダヤ人大量虐殺の存否をめぐり、20世紀末に実際にあった裁判の映画化。「アンネの日記」「夜と霧」などの書籍、映画も数多くあり、否定自体に驚いたが、実にタイムリーな作品である。米国の歴史学者リップシュタット(レイチェル・ワイズ)は自著で、歴史家でホロコースト否定論者のアーヴィング(ティモシー・スポール)と真っ向から対立。アーヴィングは、リップシュタットを英国王立裁判所に名誉毀損(きそん)で提訴する。英国の法廷では訴えられた側に立証責任があり、歴史の真実を争う裁判が始まる。

 リップシュタットの弁護団はアウシュビッツで事実を検証。アーヴィングの日記や著書から矛盾を突き、差別主義的発言を引き出す描写は鮮やかだが、裁判映画特有のカタルシスは低い。評決とは別に、同じ土俵に上がって衆目を集めたことで、否定論者は半ば目的を遂げたとも受け取れる。アーヴィングは実際、メディアで持論を展開し続ける。歴史への「否定」を唱え続けることで、権威や説得力を持つ現実は今も山積している。南京大虐殺、沖縄集団自決などに目を向け考えをめぐらすのに最適な作品でもある。ミック・ジャクソン監督。1時間50分。TOHOシネマズシャンテほか。(鈴)

2017年

11月29日

(水曜日)

おまけの映画は橋本環奈

「斉木楠雄のΨ難」
ダウンロード

最近の邦画のおきまり、コミック原作の実写版。

この中で私が注目するのは橋本環奈が演じる照橋心美。
どんだけアイドル自虐ネタを炸裂するのか!?

私が初めて彼女を知ったのは「警視庁いきもの係」と、遅いのかもしれないけれど、「コイツ一体何者?」と思わされたのは彼女の判断不能な力量。。。
そして「斉木楠雄のΨ難」を見ようと思った動機の大きな要因は彼女がどれだけ変顔を見せてくれるのかだった・・・というのは嘘だけど。
彼女は、新しいアイドル像としては後発なのかもしれないけれど、予想以上に、思い込みの激しさや身長の低さをアピールし続けるという自虐的な確信犯的演技?で私の好奇心を満足させてくれました。

この原作やアニメ版を見ていないので映画のみの評価ですが、このゆるさ、好きです!
「勇者ヨシヒコ」、「変態仮面」の監督だもんね~
「聖☆おにいさん」の実写版ドラマも手掛けるそうな・・・

2017年

11月29日

(水曜日)

女神の見えざる手

2本目は
「女神の見えざる手」
megami.jpg


予告編では主人公はかなり神経質で病的なほど攻撃的な性格のように見えたから、あまり期待していなかったけれど、なかなか面白かった!
冒頭の伏線で予測できたものの、ヤラレタ感をしっかり味わうことができたし。

主演のジェシカ・チャステインは、ここ2~3年の私の映画ベストテンに入る作品の主演や助演で強い印象を与えてくれている。
「インターステラー」
インターステラー

をはじめ「ヘルプ 〜心がつなぐストーリー〜」、「ゼロ・ダーク・サーティ」、「「オデッセイ」、「スノーホワイト/氷の王国」などなど。
作品ごとに役どころが異なっていて地味ながら巧いと思わせてくれる。

今回はこれまでの演技巧者のイメージを大きく変える、真っ向な主役!
真っ赤なルージュ、ピンヒールとトップブランドファッションで武装し攻めるロビィストを体現して、政界を震撼させるリズ(エリザベス・スローン)を見事に演じ切って。(ちなみに原題は「Miss Sloane」、邦題はなんだかなぁ)

この作品のキーワードは、リズがスタッフに檄を飛ばす際の口癖の「ロビー活動は予見すること」だ。ラストシーンは観客も存分にその意味を思い知らされる。
政治サスペンスタッチでありながら、「勝つこと」を常に求められ勝利を自分のアイデンティティとしているリズの孤独の深さや闇を痛いほど見せてくれる。

アメリカの銃による犠牲者はこの映画制作時よりさらに激増している。現実にはいまだ銃規制強化法案はアメリカ議会を通っていない・・・

2017年

11月29日

(水曜日)

「人生はシネマティック」

今日の1本目は
「人生はシネマティック」
人生はシネマティック

イギリス映画(しかもBBC)らしい地味ながら味わい深い作品。
(最近見る映画や読んでいるのは第二次大戦中にちなむものが多いのは偶然か)

戦時中はどこの国でも国威高揚、プロパガンダの映画が作られていたことは周知の事実だし、男たちが徴兵されて女性たちが男たちの仕事を肩代わりして(させられて)活躍の場を得たこと(残念ながらあくまで一時的に!)もよく知られている。

この映画は良くも悪くも予定調和な作品というのが観終わっての正直な感想だ。
とはいえヨーロッパでの大戦の当事国イギリスの映画製作の現場の有様や、ヨーロッパ大陸とアメリカとの距離感(政治的・経済的)が具体的描かれていて興味深い。

たまたまナチス時代の映画を続けて観ていて、その視点の多様性が、現実の不穏な世界情勢に少しでも活かされることを切に願う今日この頃・・・

HOME →次ページ